重症心不全の患者を救う―人工心臓の種類とその問題点ついて

医療の歴史は、人類のテクノロジーの発展と同義といっても良いでしょう。
回復不能な臓器を取り替える移植技術も、テクノロジーの発展と共にその成功率を向上させてきました。
特に人体の最重要臓器の1つである心臓の移植は非常に成功率が高く、1982年から2015年までに全世界で行われた移植手術は12万件超となっています。

しかしドナーの不足や、再生医療の立ち遅れなどに影響され、移植手術を必要とする患者に行き渡る数の心臓を確保することは、未だにできていません。
そこで活用されているのが人工心臓です。この記事では、今後さらに数を増すことが予測されている、重症心不全の患者を救う人工心臓についてご紹介いたします。

人工心臓は「全置換型人工心臓」「補助人工心臓」の2つが存在

人工心臓は、基本構成要素と呼ばれる複数の装置から成り立っています。
血液ポンプとポンプを動かす駆動装置、それらを制御する装置、駆動装置の稼働に必要なエネルギー系、情報処理系。それらの基本構成要素が集合したシステム全体を人工心臓と呼称します。

そして人工心臓にも種類があり、大きく分類して2つのタイプが存在しているのです。
回復不能となった心臓を摘出し、空いた胸腔内に埋め込むことで心臓の動きを完全に代替えする全置換型人工心臓。
心臓は摘出せず、その働きを補助する補助人工心臓の2つです。

また人工心臓の機能の肝となる血液ポンプを体外に設置するタイプと、体内に収納するタイプ、基本構成要素を全て埋め込む完全埋め込みタイプが存在しています。
さらにポンプの稼働方式や駆動装置の種類によって、様々な構成が存在しており、患者のライフスタイルに合ったタイプの人工心臓を選択することが可能です。

日本では「補助人工心臓」のみ使用されている

現在日本で主流となっているのは補助人工心臓であり、全置換型人工心臓ではありません。
日本における人工心臓に期待されている役割が、あくまで心臓移植手術を実施するまでの繋ぎとしての役割だからです。
しかし重症心不全の患者が、今後益々増加することが見込まれている以上、全置換型人工心臓が使用される例が増える可能性もあります。

人工心臓には未だ問題点も多い

しかし人工心臓には問題点も数多くあり、心臓移植の代替え治療として定着するためには、多くの課題を解決する必要があります。
機器そのものの信頼性や安全性、耐久性の確保が急務です。
また長期の抗血栓性や生体適合性に関しても、クリアしなければいけない事項が目白押しといっても良いでしょう。

長期間に渡る安定作動のために必要な制御機構や、エネルギーシステムの改善も必要です。
現在これらの問題を解決するために、心臓移植を代替するに足る人工心臓の研究開発が進んでいます。