医療IoTが作り出す医療の未来とリスク

未来の医療を語る上で、最新のテクノロジーに関する話題を避けて通ることはできません。
ウェアラブルデバイス然り、クラウドコンピューティング然り、その商用利用が間近に迫っている5G通信規格然りです。
そうしたテクノロジーの中でも、最も注目されているものの1つと言えば、IoTを置いて他にはないでしょう。
この記事では、IoTの利活用がもたらす医療業界におけるメリットやそのリスク、世界的に見た医療IoT市場の動向についてご紹介いたします。

そもそもIoTとは何か?

医療業界におけるIoTの活用事例をご紹介する前に、「IoTとは何か?」についてご説明いたしましょう。
IoTとは、「Internet of Things」の略称で、日本語では「モノのインターネット」という呼称が一般的です。
かつてのインターネットは、コンピュータやサーバ機器がネットワークに接続することで、様々な情報の受発信が行われることで多様なサービスが展開されてきました。

しかし現代においては、スマートフォンやタブレット、テレビやレコーダー、デジタルカメラ、スマートスピーカーといったデジタル情報家電だけでなく、冷蔵庫や洗濯機、エアコン、照明といった生活家電もインターネットに接続されるようになったのです。
その結果、離れたところから自宅内の家電の状況を把握したり、スイッチのON・OFFをすることもできるようになりました。
今までインターネットに接続されていなかったモノをインターネットに接続し、新たな機能を付加することはIoTの代表例の1つと言えます。

しかしこれらはあくまでIoTの一例でしかありません。IoTの可能性はかなり幅広く、B2Cのサービス以上に、B2Bのサービスが普及を始めていることはご存知でしょうか。
例えば、生活インフラにおける自動検針サービスは、その代表的な活用例の1つと言えるでしょう。
水道やガスのメーターにLTE通信モデムを設置し、担当者が現場に赴くことなく検針を実施するサービスです。

他にも自動販売機にWiMAX通信モデムを設置することで、自動販売機毎の詳細な販売状況を把握したり、そのエリアに最適なデジタルサイネージを表示するといったことが可能になります。
これらは全て既に身近に存在しているIoTの一例です。
IoTは離れた位置にあるモノを操作したり、定期的に情報を発信させることで成り立つ、新時代の情報テクノロジーと言えるでしょう。

またモノ同士の通信であるM2M(Machine to Machine)を活用できるようになることも、IoTの大きな特徴の1つです。
これまでのインターネットを介したサービスでは、集約した情報を活用するために必ず人の手が介在していました。
集約したデータから、有意な情報を読み取り、次のアクションを起こすために、必ず人間の判断を必要としていたのです。

しかしIoTでは、予め定められたルールに則り、モノが自発的に判断し次のアクションを実施します。
例えば、先ほど例としてご紹介した自動販売機であれば、機械が故障した際に不具合を起こしている箇所を自動で確認し、不具合情報をサーバに送信。
その後、サーバ内で故障の情報を吟味し、必要な資材を自動で発注。
修理に向かう作業員の手配まで自動で行うことが可能になるのです。

こうした一連の流れの自動化こそ、IoTの真髄と言えるでしょう。
またこれらの機能を実現するためには、IoTと他のテクノロジーを併用することが一般的です。
ビッグデータやクラウドサービス、AIによる深層学習、ウェアラブルといったテクノロジーは、IoTと相性が良くより一層の普及が見込まれています。

IoTの登場により医療データが収集され国や地域の医療向上に繋がる

こうしたIoTの特性は、これまで取得することが難しかった様々な医療データを収集することを可能にしました。
例えば、患者に熱や加速度、心拍を計測するセンサーや、GPSを搭載したウェアラブルデバイスを装着してもらうことで、患者の体温や転倒・転落といった状態、脈拍や呼吸数、睡眠状態といった各種データを、日常生活を送りながら収集することが可能になります。
さらに収集したデータを電子カルテの情報と突き合わせて運用することで、患者が必要としている治療を的確に提案することができるようになるのです。

IoTは医療従事者の業務の効率化も可能にする

またIoTを利用して収集したデータを運用する際、深層学習を済ませたAIを活用すれば、さらに大きなメリットを享受することができます。
その中で最も大きなメリットを挙げるとするならば、医療従事者の業務効率の向上ではないでしょうか。
医師や看護師が、かなりの激務に耐えているということは、もはや言うまでもないことでしょう。

しかしどれほどの過重労働であったとしても、医療の現場で発生するミスは患者の命に関わる可能性があり、決して許されるものではありません。
しかしIoTを導入することで、患者の身体の状態を自動で取得することができ、転記ミスや投薬忘れといったヒューマンエラーを効果的に防止することができます。
また医師や看護師がセンサー付きのウェアラブルデバイスを装着し、その位置情報や業務遂行状況をリアルタイムで取得することができれば、導線の最適化による業務の省力化を図ることができるでしょう。

また常備されている薬品や持ち出し禁止の物品に対する、セキュリティを強化することも容易です。
施設内の全ての備品にNFCチップを貼付することで、施設内のどこに何があるのかを見える化することができます。
また物の使用状況をリアルタイムで確認することができるようになるので、医材料費や設備費を削減することにも繋がることでしょう。

セキュリティにおけるリスクが課題

医療の現場におけるIoTの導入は、メリットが目白押しです。
しかしこれらの利便性と引き換えに、セキュリティリスクを抱えてしまうということを忘れるわけにはいきません。
患者、医療従事者、院内のモノの状態や動きを全て取得したデータには、非常に大きな価値があります。
悪意のある第三者が、その価値あるデータを狙って院内ネットワークへの侵入を図るかもしれません。

またそうしたハッキング被害に遭わなくとも、ヒューマンエラーによるデータの漏洩が発生したり、予期せぬデータの書き換えが発生する可能性もあります。
これらのリスクを極力排除するためには、セキュリティに対する投資を惜しむことはできません。
またデータ取得に使用しているウェアラブルデバイスに搭載されている、センサー類の状態を管理することも重要です。

もしセンサーに破損が発生した場合、誤ったデータが蓄積され続けてしまいます。
ミスの許されない医療の現場では、命の危機に関わる重大な事故に発展することもあるからです。

世界における医療IoT市場は拡大の見込み

現在医療業界におけるIoT市場は拡大の一途を続けており、その市場規模は2025年に1,658億円に到達すると見込まれています。
少子高齢化の影響で、医療に関する莫大な需要増大と、深刻な医療資源の枯渇が叫ばれる日本において、IoTの普及は医療業界における救世主となるやもしれません。
IoTは行き詰まる日本の医療問題の大部分を解決する、有効な手段となるでしょう。